「…………えっ?」
言われた言葉を理解したのは数秒後。
「キ…って、えぇっ?」
「“ムード”は、有効に使わないと。」
ムードって…今のが?
え?どこが?何が??
完全にテンパる俺のことなんておかまいなしに、
「あんなに“キスして”ってアピールしたのに、何で気がつかないのかなぁ?」
「……っ」
「先輩の顔がもう少し近づいたら、目を閉じようって思ってたのに…なかなか来ないんだもん。」
不満げに、むーっと口を尖らせる彼女。
いや、そんなこと言われても……
「もう、いいですよね?」
何も言えないでいる俺を、さっきと同様、上目遣いで見つめてくる瞳。
ねだるような視線。
「なんかもう、待ちきれないので、くるみからしちゃいますね?」
そして、突拍子もない大胆発言。
「えっ…ちょっ……」
言うや否や、彼女は一歩前に踏み出して、ひょいと背伸びをして。
ぐいっと俺の首に腕を回して引き寄せた。
次の瞬間―――
「……っ!」
唇に感じた違和感。
それは紛れもなく……