「もういいよ?」



柔らかい髪が指先に触れる度にドキドキしつつも、俺は無事に花びらを撤去し終えた。


俺ってば、なんでこんなに緊張してんだろう?



「ありがとうございますっ」


それを合図に、待ってましたと言わんばかりに顔を上げた彼女。


予想以上に近い距離での笑顔に、これまた心臓が跳ね上がった。


……何だ、コレ?



「さぁ、写真写真。」



にこにこしながら再びケータイを取り出す姿を戸惑いながら眺めていると……


ふわっと、一筋の風。

ふわりと舞った、一枚の花びら。


「せんぱ…ふへっ?」


何かを言いかけた彼女の元へと向かっていって……

ぴたっと、それは見事に、貼りついた。


「何かついたぁ?」


ピンクの花びらが着地したのは、

これまたピンクの、彼女の…唇、で。


「やだなぁ…って、え?」



急いで拭おうとした小さな掌を制して、



「先輩?」



俺は、ごく自然にそこに手を伸ばしていた。