「見て!先輩。…あ、そうだ、一緒に写真撮りましょ?」
手を広げて桜のシャワーを楽しんでいたかと思えば、
ケータイを握りしめてにこにこしながら駆け寄ってくる。
その姿は、まるで仔犬?
見てて楽しいかも。
それにしても……
「……ついてるよ?」
「えっ?」
「なんか、いっぱい…」
桜が舞う中にいたから。
ふわふわの栗色の髪の毛には、たくさんの花びら。
「…桜まみれ?」
「……?」
本人はまったく気がついていないようで。
きょとんとした顔で、頭にピンクの飾りをつけたまま俺を見上げていて。
その姿に思わず笑みがこぼれた。
「なんですかぁ?」
ちょっとムッとしているところに、手を伸ばして……
「…えっ?」
そっと摘んだ一枚。
「ほら、コレ。」
示してやれば、“あっ”って顔になって。
「もしかして…」
慌てて自分の髪に手をやる彼女。
「あー、いいよ。取ってあげるからじっとしてて?」