「“王子様”って…俺が?」


「ハイっ。」



にこにこしながら大きく頷いてるけど……



それはアリエナイでしょ?


だって、

“王子様”って言うのはさ、慎也みたいなやつを言うんじゃないの?


みんなの憧れ。
羨望の的。

キラキラ輝く、
手の届かない存在……


あ、ほら。確か、2年生にもいたじゃん?

“王子”の称号にふさわしい人間が。


そういう奴らを差し置いて、俺が“王子様”になれるわけがないでしょ?


せいぜい、王子に仕える“従者”がいいところだよ。



「それは、“みんなの”王子様でしょ?」



明らかに何かを勘違いしているであろう彼女。

早いとこ目を覚ましてもらうべく、必死に説明したつもりなのに……



「いいですか?先輩。
“みんなの”王子様と、“私の”王子様が同じだとは限らないんですよ?」



逆にきっぱりと言われてしまった。



「だから、誰が何と言おうと、私の“王子様”は先輩なんです!」