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「うわっ…」
目の前に広がった光景に、思わず目を奪われてしまった。
「桜って、まだ咲いてたんだ?」
彼女に引っぱられるようにして、歩くこと数十分。
賑やかな駅前の通りを抜けて、奥まった路地へと入りこんで……
たどり着いたのは、公園とも空き地とも取れるような…これと言って何もない場所だった。
彼女のイメージからして、“雑貨屋さん”とか“カフェ”とかを想像してたから、意外だ。
「そうなんですよっ。
ここのは、なぜか遅咲きみたいで…今がちょうど満開なんです」
一面、ピンク色の世界。
そう…何もないこの場所に、唯一あるのが“遅咲き”の桜。
「綺麗でしょう?この前、偶然見つけたんですっ」
興奮気味に話す彼女。
でも、これは結構嬉しい発見かも。
だって、来年の春まで見られないはずのものが見られたんだから。
「先輩とまた一緒に見られてよかったぁ」