「かれ…し?」
思わず、マヌケに聞き返してしまった。
「やっぱり、好きな人には名前で呼んでほしいじゃないですか。」
「すきな…ひと?」
「同じ発音でも、なんかこう…すごーく特別な響きに聞こえるでしょう?」
俺のことなど気にせずに、うっとりとした表情で言ったかと思うと、
「だから、“くるみ”って呼んでくださいね?」
最後はにっこり。
破壊力抜群の笑顔を向けた。
……うわっ。
いやー、これはすごい。
ここ数日、毎日見てるにも関わらず、毎回ズキュンとくるもんなぁ。……って、そういう場合じゃなくて。
今、彼女は確かに“彼氏”って言ったよな?
“好きな人”とも。
ってことは、やっぱり今のこの状況は勘違いなんかじゃなくて……
彼女は、俺と“つき合ってる”つもりでいるってこと…だよな?
「ねぇ、先輩?今日はちょっとだけ寄り道してもいいですか?」