……とは言え。


いくら励まされたって、そんなに簡単に気持ちが切り替えられるわけもなく……


どう考えても、何かの間違い、はたまた夢か幻か…としか思えない。


こんなのあり得ない。


なのに……



「先輩、帰りましょ?」



あれから数日。


俺の戸惑いをよそに、普通に“恋人同士”的な時間が流れている。


朝も、昼も、帰りも。


彼女は当たり前のように俺のところにやって来て、周りの目なんて全く気にせずにくっついてくる。


これって、やっぱり……



「あのさ、」


それでも、ちゃんと確かめておきたい。


曖昧に流されてちゃ、ダメだ。


「森村さん…さ、「くるみ、です。」


意を決して呼びかけた…のに……


「え?」


「“森村さん”じゃなくて“くるみ”でお願いします」


「あ…じゃあ、くるみちゃん…「“ちゃん”はいらないです。」


「え?でも…」


「先輩は“彼氏”でしょう?ちゃんと名前で呼んでくれないと。」