「そのまま、って…」


全くわからない。



「先輩は今、彼女は…いないんですよね?」


「あー…うん。」


「好きな人、も?」


「いない…けど、」


「じゃあ、いいでしょう?」



パッと俺の手を掴んで、キラキラした瞳で見つめてくる彼女。


……うっ。

不覚にもドキッとしてしまった。


そんな場合じゃないのに。



「“王子様”になってくれますよね?」



ぎゅっと握りしめられた掌。

突き刺さる、期待に満ちた視線。



「……っ」



言われてることは理解できないけど、これと言って断る理由もない。

なんせ、こんなことは初めてだから。

断り方すらわからない。



「えっと…」



どうしたらいい?


こういうとき、みんなどうしてるんだろう?


慎也は……



「……先輩は、私じゃダメですか?」