「そうだとしたら、見たって感じだね。雰囲気似てる気がするし。」
陽菜乃がふんふん、と頷く。
「しかも、わたし昨日多分学校の前で見たかも…。」
「まじ!?」
「そうなの?」
陽菜乃と千嘉の声が被る。
「うん。」
「へぇー…。じゃあ結衣は蓮田くんと2回も会ってるんだね。」
「蓮田くん?」
「うん、あの転校生の人。蓮田葵くんっていうの。」
蓮田、葵…
「……。」
千嘉は黙ったわたしを見て不思議そうに首をかしげた。
「どしたの、結衣?」
陽菜乃に聞かれてはっとする。
10年前に迷子だったのを助けてくれた恩人と同じ名前なんて言っても偶然だって言われるだろう。
「ううん、何でもない。」
そう返事したところでチャイムが鳴ってしまったので席に着いた。