遥、知ってる?人と人の巡り会わせには不思議な力が働いているんだって。お母さんはね、それを信じてるわ。

・・・『合縁奇縁』、お母さんが一番好きな言葉。





「お母さん!どうしたの。なんで、いなくなっちゃうの?!」
「遥、ごめんね。でもお母さん遥のことずっと大好きだから。」

・・・あれから11年近くがたった。何度この夢を見たことだろう。しかし、不思議なことにどうしてお母さんが死んだのかを私は知らない。当時、4歳だった私はお母さんが最後に言ったこの言葉だけ鮮明に覚えていた。
いつしか、双子の妹と弟に聞かれた。
「お母さんはどんな人だったの?」
2歳下の双子は自分の母親について、まるで知らないのだ。私は黙り込んでしまった。
「優しい人・・・。」
私は自分が恥ずかしくなった。母親のことを知らない自分が腹立たしくさえ思えてきた。私には、お母さんと関係するものを何ももっていなかった。
とぎれとぎれの少ない記憶と数枚の写真以外は何も・・・。