2人の仲が、すっかりおかしくなって1ヶ月ほど経った6月頭。
相変わらず、広瀬は足掻きまくり、オレはひたすら『話だけなら聞く』という姿勢。
昼休みの弁当は、すっかり、広瀬と二人、プラス、普段は学食組の数名と食べるようになった。
牧村は、寺本志穂のグループに行ってしまって久しい。
さすがに、そろそろおかしいと思うヤツもいるようだ。
が、送り迎えも変わらず続いているし、ハルちゃんだって女友だちも欲しいよね、くらいに思われているらしい。
さすがは、長年の公認カップル。
広瀬が、今日はハルにこんな冷たくされた、
あんなこと言われた、とイチイチ報告して、
オレが「はいはい」と聞き流すのも、既に日課と化していた。
まるで、どっかで読んだようなシチュエーション。
思い出して、思わず吹き出した。
そう!
昔、何かのマンガで読んだ熱烈な片思い。
ホント、どの辺が、学校公認カップル?
授業中に思い出して吹き出したもんだから、隣の牧村が、
「どうしたの?」
と、不思議そうに聞いてきた。
その時の授業は、かなりヨボヨボのおじいさん先生が担当する数学。
ひたすら、教科書を読み、練習問題になると、決まった法則で誰かを当てる。
だから、オレは気がゆるんでいたのだと思う。
くすくす笑いを引っ込めると、つい牧村に聞いてしまったのだ。
「なんで、広瀬に冷たくするの?」