そんな静寂に包まれたバルコニーに大きな音が響いた。
「彩海!!!!」
突然、ドアが開き出てきたのは息を切らせた…………。
「……………梓紗」
琉斗ではなく梓紗だった。
あたしは泣いていたことを忘れていた。
「彩海、泣いてんじゃん!!!!」
「えっ……………。」
その言葉にあたしは急いで頬を伝う涙を拭った。
「教室に戻ったら、琉斗とユリが色んな人に囲まれてて………。」
その瞬間、さっきの出来事がフラッシュバックする。
あの………………キスシーンが新鮮に記憶に残っている。
「そしたら、彩海がどこにもいなかったから……………。」
「なんか……………ゴメンね??」
「何が??」
「梓紗、心配してくれたんでしょ??」
「そう…………だけど…………そんなことより!!!!」
「なんか、ここら辺って色々と汚いからホコリが目に入っちゃって……。」
「本当にそうなの??あたしは彩海がりゅう「大丈夫だよ!!!!」」
あたしは必死に『涙』の理由を誤魔化した。
琉斗に心配させたくない。
梓紗にだって心配させたくない。
あたしが泣いてた理由は『あたしだけ』が知っていればいいこと。
誰も知らなくていい…………。