その瞬間プルルルルと長水の携帯が鳴った
「ちょっと悪りぃ」と長水は「はいよ」と携帯に出た
「あぁ、無事だ今知り合いの家にいるから…そう。あぁ、場所は…そう、その場所に迎え頼むな」
ピッと携帯を切った長水は「ふぅ」とため息ついた
「まさかまた何かしに行くのか?」
「あ?いや今日はもう行かない…つか、しばらくは何もないかな」
長水はタオルで髪をガシガシ拭いた
「…お前一体何者なんだ?この間の凪を助けた時も思ったけど」
と丁嵐は長水を見た
少し間を開けてから長水は「うん」と静かに笑って立ち上がった
「これ見りゃ秀才のお前なら分かるだろ?」
とタオルを取って長水は背中を見せた
「…お前…その刺青の花って」と長水の背中に大きく綺麗に彫られている真っ赤な彼岸花を見て丁嵐は目を丸くした
その花の模様はずっと昔にニュースで話題になっていた刺青だった
「…極道なんだよね。俺の家系」
長水は「ははっ」と笑みを見せた
「…長水」
丁嵐の目には長水の表情は泣いているように見えたのだった
《テスト近いです》
「華宮さんこの問題の答えってこれで合ってる?」
「はい!大丈夫だと思いますよ蔭平さん」
前期テスト期間中の三連休初日
枳殻高校の図書室で勉強していたのは蔭平と華宮だった
「そういえば、詠大丈夫かな?」
蔭平が数学の問題をスラスラ解きながら華宮に尋ねた
「それなら大丈夫ですよ~!兄が詠さんに今朝電話してましたので多分今頃兄の通う大学の図書室で勉強教わってると思いますよ」
「そっか!それなら大丈夫だね!高笠先輩高校の時三年間ずっと学年一位だったもんね」
蔭平と華宮がまさか自分の話しをして盛り上がってるとは知る良しもなく詠は高笠の通う大学の図書室でスパルタ授業を受けていた
「詠…お前今何の勉強してるか分かってるのか?」
「へ?分かってますよ!古典でしょ?」
「現文だボケェッ!」
スパーンッと丸めた教科書で高笠は詠を叩いた
「いってぇ!!もうマジ嫌だ!!勉強ヤダ!」
「ヤダヤダ言ってんじゃねぇ!赤点取りてぇのか!?」
「取りたくありませーん!」
完全に鬼に変わってしまった高笠を止められる者はもやはこの空間に誰1人いない
「…つか、何で俺まで…」
詠の隣で天宮城は半泣きでため息ついた
「…え?親父今何て?」
「ん?聞こえなかったのか風雅?今日から3日間お前に付きっきりで家庭教師を付ける事にしたと言ったんだ」
「入れ」と長水の父親は襖に向かってパンッと両手を叩いた
「家庭教師って何勝手に「失礼します」
聞き慣れた声とともに襖を開けて入ってきた人物を見て長水は目を丸くした
「風雅!お前の家庭教師をしてくれる笛吹東伍君だ!聞けばお前の部活の先輩だったらしいじゃないか?しっかり勉強を教わるようにな」
「ちょ、何でいきなり勉強しろなんだよ?!俺「風雅!」
ギロリと睨まれた長水は父親の迫力に負け静かになった
「この間お前のテストの成績表を見させてもらったが随分と酷い成績だったな…」
長水はギクッとした
「俺は今日からしばらく仕事に行って来る。風雅次の成績楽しみにしているからな」
そう言って長水の父親は何人かの舎弟を連れて仕事に行ってしまった
「…で?どういう流れでこういう事になったんですか笛吹先輩…」
「へ?あ~…大学に行こうとしたら「お前勉強出来るか?」って聞かれて小、中、高と学年での順位とか成績とかめっちゃ聞かれて全部話したら連れてこられた」
「まさか長水の親父さんだったとはね」と笛吹はケラケラ笑った
「…言わないでくれますか俺の家の話し」