《始まりの予感》
何で何で何で何で俺はいつもこんな目に合わなきゃならんのだー!?
長水は新学期の始めの授業中に黒板を目の前にチョークを持ったまま立ち尽くしていた
隣では転校生の丁嵐が黒板に書かれた英語の問題をスラスラと解いている
「何だ長水この問題は中学生レベルの問題だぞ?高2にもなって解けないとは一体お前は中学時代何を勉強していたんだ?」
「全く…」と英語の教師はため息ついた
「何をって言われても」と長水は頭をかいた
そんな長水の隣で問題を解き終えた丁嵐はチョークを置いてスタスタと自分の席へ戻って行く
「ちょ!丁嵐手伝ってくれないのかよ!?」
と長水は神の救いを求めるように丁嵐に助けを求めた
ピタッと歩く足を止めた丁嵐は振り向いて
「それくらいの問題で人に助け求めてる暇あんなら頭使って何か書けよ」
と長水に一言言い残してまた席へ戻って行った
「何だよあの言い方」とざわつくクラスメイト達
だがクラスでざわつくのは大半男子群で女子はと言うと顔を赤らめながら口々に「丁嵐くんかっこいい!素敵!」など言っている
もちろん当の本人にはそんな女子の言葉は一切耳に入っていない
「何だよ冷たい奴だな」と思いながら結局長水は一問も解けず授業終了のベルが鳴るまで黒板と睨み合っていた
隣のクラスでそんな事が起こっているとは知る訳もなく長水が黒板と睨み合ってる間詠達のクラスでは笑い声が沸き起こっていた
「違うよ詠!だからこれは「来るぞ」じゃなくて「おこしになります」だってば!」
「口悪いにも程があるだろ?」と黒板の問題を解き終えた蔭平が隣で悩む詠に問題の答えを教えていた
「何で他人が人様の家に上がるだけなのに太郎は母親に敬語使わなきゃなんないんだよ?!」
「だから詠これは現文の授業なんだってば!」
ちんぷんかんぷんの詠と頑張って説明する蔭平の2人を見ながらクラスメイトはたまらず笑い始めた
「頑張れ剣道部!」と応援する者まで出てくる程だ
現文担当の教師までもが「詠くん…」と呆れに近いため息をつきながら苦笑いしている
そんな2人を後ろの席で見ながら華宮は「お兄ちゃんは去年詠さんにどうやって勉強を教えながら赤点を取らせなかったのでしょうか?」と心の中で呟いた
「だから!転校生が腹立つって言ってんだよ!」
「転校生?…あぁ!長水のクラスに来た人か」
昼休みに屋上で弁当を食べていた長水は蔭平と詠に「そう!」と頷いた