『彼』の学ランはモミクチャにされ、その胸ポケットからタバコがこぼれ落ちた。



ああ……。

まだあんなもの持ち歩いているんだ。



呆れてまた、溜息を一つこぼした。



けれど、紙切れのようなものも一緒に飛び出し、それはタバコを置き去りにして、自分だけヒラリ、ヒラリと宙に舞う。



まるで意思を持っているみたいに、風にのってわたしの所まで流れて来た。



足元に落ちたA4サイズの半紙を拾い上げる。


それは、父兄宛ての授業参観のお知らせだった。一昨日配られたものだ。



まだお母さんに渡していないんだ。それとも、渡さないつもりかな。


だとしたら、胸ポケットの中に大切そうに入れているのは、どうしてだろう。