残った最後の一人、右サイドを細かく何本も編み上げた、赤の混じった漆黒長髪が、『彼』を目掛けて走り出す。そうして助走をつけてから飛び上がった。


『彼』の脇腹に強烈な蹴りが入った。『彼』の身体は“く”の字に曲がって吹っ飛び、土の上へと横向きに叩き付けられた。



それからはもう、メチャクチャだ。

やられては、やり返す。揉み合っては離れ、すぐにまた拳を振る。



傷だらけでフラフラで。それなのに何度も何度も立ち上がる『彼』は、一体、何を求めているのだろう。





初めて『彼』のこんな姿を見た時、『彼』が死んじゃう、そう思った。ボロボロと頬を伝う涙を止められなかった。



でも今は、もう見慣れてしまった。



ほんの小さな刺激にも牙を剥き、破壊的な世界でしか生きられない不良たち。


でも『彼』と彼らは、こんな風に傷つけ合いながら、やり場のない情熱と力を爆発させて発散しているんだ、と。勝手に解釈し、勝手に納得した。