隣の席の眞柴くんが、食い入るようにわたしを見詰めていた。



眞柴くんも、のど飴欲しいのかな?



そう思ったわたしは、机の中からもう一つそれを取り出して、そうっと、眞柴くんの机の上に置いてみた。



(あげる)



「あ?」


眞柴くんは不思議そうに小首を傾げる。



そうしてから視線をその、のど飴に落とし、ほんの少しの間、何やら考えているみたいだった。

けれどやがて、それを手に取りわたしの机の上に返して来た。



いらないのか……。



(じゃあ、何?)



気になって仕方がなくて、わたしもじいっと眞柴くんを見詰め返した。



そしたら、眞柴くんは重そうに口を開く。


「喉、痛いのか?」



のど飴をなめるわたしを見て、そんな気遣うようなことを言ってくれた人なんて、今まで一人も居なかった。だから、すごくびっくりした。



だって。

「ずっるー」とか「ちょうだいよー」とか、そんなことばかり言われ続けて来たから。