『彼』の手を取って、芝の生えた斜面を勢いよく駆け下りた。


気持ちばっかりが先走ってしまって、わたしの左足がズリッと滑る。



たちまち後方に傾いたわたしの身体を、背後の『彼』が脇を抱えるようにして受け止めた――


――のだけれど。



勢いづいたわたしの身体は普段の何倍も重かったみたいで。うん、きっとそう。多分、何十倍も何百倍も重かったんだ。



ドサッと二人して後方に転倒してしまった。



プッと吹き出した背後の『彼』。ゆるゆると振り返れば、満面の笑顔がそこにあった。

『彼』につられるように、わたしの頬と口元も緩む。



一応は彼の横に退いて、でもどうしても『彼』の希少で貴重な笑顔を間近で見たくて。

寝転んで天を仰いだままの『彼』の顔を上から覗き込んだ。



『彼』の手がゆっくり伸びて来て、私の横髪をそっと、ぎこちなく撫でた。