『彼』が泣き叫んでくれたなら、わたしなんかでも、もしかしたら何かできたかもしれないのに。



『彼』の心の叫びは決して『彼』の中から出て来ることはなくて。


『彼』は無口だから。



抱え込んだ苦しみや悲しみは、一体どこで消化するつもりですか?



わたしが『彼』の捌け口になれたならどんなにいいだろう、と。

心の底からそう思う。



組み敷いたわたしを、『彼』はじっと見詰める。


ジリジリと焦げ付くような熱い眼差し。ただわたしは受け止めることしかできなくて。

その熱がいつか冷めるのを、胸の痛みと共に待った。