なんの考えもなしに、身体が勝手に動いていた。



おもむろに『彼』のズボンのポケットに手を突っ込んで、そこから“あの紙”を取り出した。



(待って!)



玄関でヒールに足を入れる彼女の正面に、靴下のまま回り込む。



畳んであった紙を広げて見せたら、彼女はほんの少し驚いた顔をして、だけど手紙のタイトルにその目を留めてくれた。



「授業……参観?」


中学にもそんなのあるの、と不思議そうに小首を傾げ、今日、初めて知った風な彼女。



(来てください、お願い)



祈る気持ちで彼女を見詰め続けた。