まるで、ただの紙切れか何かみたいに、無造作に扱われたのは五千円札。わたしたち子どもにとっては大金だ。



驚いて彼女を見上げていると、


「いつの間に彼女なんか……生意気に。彼女の分もこれで足りるかしら?」


彼女は耳を疑うような言葉を口にした。



五千円もあったら、コンビニでお買い物したって沢山買えるのに……。



「お口はどこに落として来ちゃったの、ヒーデくんっ?」


身を屈めて手を伸ばし、彼女は開いた手の指先で『彼』の頭を軽く突いた。


『彼』は何も言わず、膝にのっけた左腕に鼻から下を埋めた。

テレビを見詰めたままのその目は、ふてくされているような、照れているような……。



ふふっと。失笑なのか苦笑なのか良くわからない笑い声を小さく漏らし、彼女は玄関へ向かう。


ふと、『彼』がズボンの中に大切にしまっている『授業参観のお知らせ』のことを思い出した。