躊躇いながらもおずおずとそこへ移動し、『彼』の隣に腰を下ろした。そうして折った自分の両膝を抱き締めた。



『彼』のお母さんがスクと立ち上がり、振り返るようにして向きを変えた。

そうして、ゆったりとした歩みでテレビの横にある衣装ダンスの真ん前へと移動した。



中から綺麗な薄紫のスーツを取り出し、下着の上に纏う。



衣装も綺麗だけれど、『彼』のお母さんも綺麗だ。


多分、若い頃に『彼』を生んだんじゃないかなって思った。

だって、うちのお母さんと余りにも違う。



彼女は高級そうなハンドバックを手にし、中から財布を取り出した。


「夕ご飯作る時間なかったから。これで何か買って食べて」


言いながら、財布の中からお札を一枚抜き取って、部屋の真ん中にある座卓の上に捨てるように置いた。