どうしてだか息まで潜めて、流れる時の中、じっと寄り添い合っていた。



やがて、ガチャッと大きな音を立てて慌ただしくドアが開き、中から出て来たのは見たこともない中年の男の人。


テラテラしたグレーのスーツにテラテラした黒いシャツを覗かせ、ネクタイはしていない。



この人は多分……ヤクザ?



怖くて咄嗟に、隣の『彼』の袖をキュッと掴んだ。




「よう、坊主、帰ってたのか。また覗いたな? このませガキが」


冗談っぽく言って、『彼』の頭をくしゃりと撫でた。



『彼』は俯いたままピクリとも動かない。




「相変わらず愛想のねぇガキだなぁ」


言いながら男の人は、『彼』の頭を上から押さえつけてグラグラと上下に揺する。でもそれは意地悪とかじゃなくて、可愛いからつい、からかってしまう、そんな風に見えた。



『彼』は何も言わず、その顔に表情も浮かべず、俯いたままじっと耐えていた。