無口な『彼』は何も答えない。


だけども酷く傷付いたような顔をするから、胸がキュッとなった。



フイッと視線を逸らして、『彼』はドア横の壁際に行き、背中でもたれ掛かった。そうしてそのまま、ストンと腰を地べたに落とす。


ションボリと項垂れ、曲げた両膝の間を見詰めて動かなくなった『彼』。



『彼』が何にこんなにも傷つけられたのか知りたくて、ドアの前にしゃがんで、郵便受けの蓋に手をかけた。



途端、その手首を横から掴まれた。驚いて隣の『彼』に視線をやれば、今度は泣きそうな顔。



ああ、わたし――

『彼』を余計に苦しめたんだ。



(ごめんね)