見てない。



あたしは何も見てない。



てか、相手を確認してから開ければ良かった。



「凜、俺が悪かった!だから、開けてくれ。凍え死ぬって!!」



『……』



焦った口調で喚き始める男。



今にも思い切りドアを何度も叩きそうな勢いだから弱った。



近所迷惑になるのはごめんだ。



あたしは盛大なため息をつき、仕方なくドアを少し開ける。



「よっ!凜」



『……今何時だと思ってるのよ、廉』



心底嫌な顔つきで廉を見る。



それでも、明朗快活な笑顔を向けてくるもんだから、怒る気もだんだん薄れていく。