明らかに蓮は引いている。

「あ、でもケルンは人を襲ったりしませんよ。」

「…そうですか…」

そんな二人の間では晶がまだケルンに頬擦りしていた。すると車が止まった。

「着いたぞ。」

京介は先に助手席から降りた。三人も自分の荷物を持って車から降りた。

「…うわ…」

「…わぁ…」

晶と勇翔は言葉が出なかった。目の前には一目では見渡せない程の広さの和風の屋敷が建っていた。

「ちょっとここで待っててくれ。」
京介は先に歩いて行く。

「お荷物をお預かり致します。」

それは車を運転していた男性だった。

「あ、はい。どうも…」
「あ、ありがとうございます。」

「お願いします。」

三人は荷物を男性に預けた。

「では、お部屋にお届けしておきます。ごゆっくりなさって下さい。」

男性は荷物を持って立ち去った。すると京介が戻って来た。

「ん、荷物は持って行ったか。」

「「き、京介さん!?」」
晶と勇翔が一緒に詰め寄った。

「な、何だ?」

「何ですかこの家!?」
「あの人一体何ですか!?」

二人の気迫に京介は少したじろいだ。

「ち、ちょっと待て!答えるから!」

京介は二人を落ち着かせた。

「はぁ…取りあえず、俺の部屋に行くぞ。」
四人は京介を先頭に長い和風の廊下を歩いて行く。

「懐かしいですね。何年振りでしょうね…」
「蓮さんは来た事あるんですか?」

「そりゃあ、幼馴染みですから。」

「そうなんですか!?」
「はい。言っていませんでしたっけ?」

「…聞いてませんよ…」
「そうでしたっけ?」

蓮の声は少し楽しげに聞こえる。

「この家は俺の爺さんの家だ。家は、逢原家と東西を二分する極道の元締めなんだよ。」
「そうなんですか?」

「あぁ。今は家の爺さんが元締めだがな。」