四人は学園の応接室に戻った。途中は誰も口を開かなかった。悠里はソファ―に座り、三人は反対側のソファ―に座った。

「…では、お話し戴けますか?」

「…私は、かつて国連統合軍中央特殊作戦軍紫閃大隊に所属する中尉でした…」

「紫閃大隊の…中尉…!?」

「はい…そして紫閃大隊解体後は中央技術研究局の局員として従軍していました…それから私は勇翔を身ごもり、退役したんです。」
「…そうでしたか。しかし、あれ程の力がお有りなのに、中尉止まりだったんですか…」
「当時の紫閃大隊には、勇翔の父さんの坂原斗耶(とうや)を筆頭に、京介君のお父さん…師紀憲蔵さんやクローム・アルバーヌ、ガリス・ベイガーといった、今の元帥達全員が所属していましたから、私には将校はとても勤まりません。」

「元帥が、全員…」

「それに千手観音は仏敵から人々を救うための護法の力こそ強大ですが、直接戦闘に使えるような力は極僅かです…あの剣も弓矢も、人々を守るための光を集める力の応用ですから…」

「具体的には、どういった力なんですか?」
「集めた光を霊気で特定の形に押し固めることで、武器として扱っているんです。ですから、霊気を吸収するようなタイプの聖霊とは相性は悪いですね。」
「そうですか。それで、勇翔のお父さん…坂原斗耶さんは、どんな人物ですか?」

「…あの人には、誰も敵いません。この世の全ての武器を操り、扱えないのは精霊王の武器やその類のものだけ。」

「精霊王の武器というのは?」

「精霊王は、自分の存在自体を武器に圧縮して用いています。ですから、あの人にも扱えない…」

「…分かりました。では、勇翔に剣術を教えたのは、お父さんなんですか?」

「…はい。あの人は、自分にできるのはこれくらいだからと、いつも勇翔に剣術を教えていました。」