「……今はまだ、理解して貰えんだろうが…時がくれば、いずれ分かるだろう……その時には、貴方方が敵にならないことを祈っているよ…」



ソルは、傍らに掛けていた剣を腰に差して立ち上がった。


「どこに行くんだい?」

「今日はもう失礼する。仲間を迎えに行かなくてはならないのでね……剣帝の息子よ」


「は、はい!?」


「…君は、近い未来で選択を迫られることになるだろう」


「せ、選択……ですか?」


「一方を選べば、遠い未来を救うことになるが、その時は何かを犠牲にしなければならない……一方を選べば、近い未来を救えるが、遠い未来に災いの種を残すことになる……」


「………そんな……僕は、どうすれば……」


「………どちらを選ぶかは、君が決めることだ……俺は、道の存在を告げる……それだけだ」


「……………」


「君は、それだけの力を持っているということだ……その時には、違う道があるかも知れない……それは、俺にも分からないことだ。そればかりは、その時の君にしか分からない……だから、俺は道の存在を告げるだけしかできない……すまないな」


「いえ………」


「……それと、富山晶のことだが、今はそのままにしておくことだ」


「どうしてかな?」


「クイーンオブハートを狙っているのは、我々だけでは無いということだ。その組織に悟られれば、間違い無く狙われることになるだろう……それは我々も望むところではないのでな」



ソルは最後にそれだけ言って部屋を出て行った。残された室内には、重苦しい空気が横たわっていた。