男のそれぞれの腕には槍や小さな塔の様なものが握られている。

「ぬあぁっ!!」

男はその全てを振るって矢を全て叩き落とした。

「な、あれだけの数を…!?」

勇翔は唖然とした。

「まさか弥佳の矢を全て叩き落とすとはな…あの姿からして、恐らく毘沙門天だろうが…まさか仏門の守護者が敵に回るとはな…」

「毘沙門天て…そんな…」

「だが、問題無い。私と…」

八洲はそう言って横目にレオンを見た。

「特務隊長殿がいらっしゃるのだから。」

「…いいでしょう。」

レオンは腰に差していた剣を抜いた。そしてそれを地面に落とした。しかし剣は地面に刺さらずにそのまま沈んだ。剣が沈んだ場所から、波紋が広がる。

「来れ、タナトス…冥府より出でし冥闇(くらやみ)の王子よ…」

するとレオンの体の回りに鎖で繋がれた棺が四つ、浮かび上がった。髪と瞳も黒というよりは群青色に近い色合いになっている。

「ほう、タナトスですか…流石は特務隊長殿だ。では、私も…」

八洲はそう言って手にはめていた手袋を取った。その手の甲には元帥達と同じ封印紋があった。

「来れ、スサノオ!大海を納めし荒ぶる武神よ!」

すると八洲の手の甲の紋様が朱く光った。それと同時に八洲の髪が藍色に染まり、瞳は茜色に染まっている。今度は着ていた服が紅い光を放つロングコートの様なものに変わった。

「す、凄い霊気だ…」

勇翔はその場から動け無くなった。

「あの方は、十年程前まで現役の元帥だった方だ。当然だろう。だが今でもあれだけの霊気を纏えるとは…」

「え、そうなんですか?」

「あぁ。その闘い方から、武神と呼ばれていた。」

「武神…」

するとそこに弥佳が降りて来た。

「弥佳は援護を頼む。レオン殿は回り込む様にしてあいつを逃がさないで下さい。勇翔、君は戦えるか?」