「はい。ありがとうございます。」

「うむ。」

拾蔵はまた箸を動かした。するとそこに黒服の男がやって来て拾蔵に耳打ちした。

「…何?儂にか?」

「えぇ。もう居間にいらっしゃいます。特務隊長ということで通したのですが…」

「…分かった。彰奈さん、すまんが儂はこれで失礼するよ。客人が来てしまった。」

「あら、そうですか。」
「勇翔君達も、すまんが、話はまた後になってしまうの…」

「いえ、お構い無く。」
「すまんの。」

「いえ。」

拾蔵は立ち上がって部屋から出て行った。黒服の男も後について行った。

「…お客さんって、誰なんでしょうね?」

勇翔は京介に向けて呟いた。返ってきたのは
「…さぁな。」

という素っ気無いものだった。





拾蔵が襖の前に立つと黒服の男が襖を開けた。中には黒いロングコートを着た黒髪の若い男が正座で待っていた。拾蔵は男の反対側に腰を下ろした。

「…さて、国連統合軍中央指令室、大元帥直轄特務隊]ジャッジメント]の第一部隊長謙特務隊長が、一体儂に何のご用かの?」

それに答える様に男は礼をして頭を上げた。
「…お久し振りです。師紀拾蔵様…元国連統合軍第一師団師団長様…」

「…その名で呼ばれるのも、久しいのぉ…それで、一体儂に何のご用かの?」

「はい。拾蔵様もご存じかと思いますが、今現在精霊界の宝珠が次々と何者かによって強奪されています。そして、この日本にある極焔の宝珠も狙われています。」

「ふむ…貴公はそれを防ぐために派遣されたのじゃな。」

「はい。その件で、拾蔵様のご助力を賜りたく…」

「儂の?」

「はい。」

「しかし、こんな老いぼれが何の役に立つかのぉ…」

「…かつての炎皇と呼ばれたお力…伊達では無いでしょう。」

「…また、前線に立つ日が来ようとはのぉ…これを握る日が来てしまったか…」

拾蔵は立ち上がって後ろに飾ってある刀を取った。