『ここって・・・』
「懐かしいよね。」
目の前にそびえ建っているのは・・・
あきれ果てて、次の言葉が浮かんでこない。
本当にどういうつもりなんだろう。
久しぶりにこっちへ来て、
懐かしさからのただの思い出巡りなんだろうか。
それに付き合わされている、あたしは
いったいナンなんだろう。
こんな風に手なんか繋いじゃって、
真夜中に卒業した高校にきちゃって、
まるで、恋人同志みたいじゃない。
「中、入れないかなぁ~」
いつのまにか、裏門のところに来ていた。
正門よりもこっちの方が駅に近かったから、よくここの端っこで待ち合わせをしたっけ・・
(‥確かに懐かしいな)
まだ2年ちょっとしか経ってないのに
ものすごく昔のような気がする。
『こんな夜中にうろついてたら、
不審者だって通報されちゃうよ。
昔よりセキュリティが厳しいらしいから。』
「・・だよなぁ、行きたい場所があったんだけどな~~」
繋いだあたしの腕をブンブン振り回す。
あの頃みたいに。
「ひと周りして戻るか。」
拓也は、再びあたしの手を引いて歩き出した。
何の躊躇いもなく絡めとられる指先。
胸の奥がズキリ痛み体温が上昇してくる。その動揺を悟られないよう俯き、そっと息をはいて呼吸を整える。
「ん、どした?」
『別に・・・』
薄暗い外灯が二つの影を伸ばす。
見上げると、正面に渡り廊下が見えた。
二人の想い出が詰まっている場所だ。
眼を逸らすことが出来なくなる。
さらに繋いだ部分から伝わってくる温もりが、
否応なしにあたしを過去に
―――引きずり込んでいった・・
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