「…麗。俺が、もしも…」


お前が好きだって、言ったらどうする?


そんなこと、聞けるわけなかった。


答えなんてとうに、決まってる。


「もしも、なんです?」


「…なんでもねぇ。聞き流してくれ」


麗は腑に落ちない顔をしたが、それ以上は何も聞かないでくれた。


…言えるわけ、ねぇんだよ。


麗は神で。


人間じゃない。


俺はいつ死ぬか分からないところに身を置いていて。


神じゃない。


翼鬼と天鬼を、守ると決めた。


あいつらを喜ばせてやりてぇのに…。


…なんて、こんな言い訳しか思いつかない。


いい加減素直になれよと、心の奥から聞こえる。


素直になんかなったら、そこで終わりだ。


もう鬼を演じる必要もないだろう?


そりゃあ、ないさ。


でもな…今は、素直にはなれねぇんだよ。


「土方様。わたくしはそろそろ帰ります。…ありがとうございました」


ふわりと、笑って麗は言った。


その笑顔に…心が動きかける。