歩いていると、俺の名を呼ぶ声がした。


「…土方はん!!」


げっ。


「土方様?どうなされました?」


「麗、走れるか」


「へ?」


聞いておいてなんだが、俺は麗の手を握って走り出した。


「ちょっ…土方様!?」


焦る声が聞こえる。


悪いとは思うが…すまねぇ。


あの女たちから逃げたい…。


「土方様!わたくし…走るの、苦手…で…」


息も切れ切れに話す麗に気づいて、俺は止まった。


「すまねぇ。大丈夫か?」


はぁはぁと息を整える、麗。


顔をあげて、微笑んで…


「大丈夫です。久しぶりに走ったものですから…」


…全く大丈夫そうには見えないが。


麗が落ち着くのを待っていたら。


「土方はん!その方はどなたですか!?」


「まさか、恋仲やあらへんですよね!?」


遊女たちに追いつかれてしまった。


はあ…めんどうだな…。