翼鬼が無自覚なのは、こいつが母親だからか、と本気で思った。


神のくせに無自覚って…。


「…心配、してくださるんですね」


麗が驚いたように言う。


「しちゃ、悪いか」


「いいえ。ただ…びっくりしただけで。ありがとうございます」


にっこり笑って言う麗に、俺は不覚にも顔を赤くしてしまった。


こんなこと、嘘だろう?


有り得ないはずなんだよ。


ていうか、有り得ない。


絶対、何が何でも自覚なんてしてやるもんか。


「そろそろ、帰りましょうか?お仕事もあるのでしょう?」


「そうだな…」


俺たちは甘味処を後にした。