すると美利亜はその脇を通り、後ろから侑を思いきり押した。

「うわっ!」


「さようなら。」


美利亜はそう言ってバタンとドアを閉めると鍵をかけた。


すると後ろからいきなり抱きしめられた。


「よかった。無事で。」


「慎也さん?じゃなかった。嵐さん?」


美利亜は恐る恐る振り向いた。


するとすぐそばに嵐の顔があった。


「話は後。それより逃げるぞ。」


嵐は持っていたパーカーを美利亜に掛けると耳の後ろをいじり、


「退散だ。」


短く告げて美利亜の手を握ると走った。


嵐は走りながら


「おかしい。」


違和感を感じた。


「何が?」


「誰もいない。社長たちが片付けたのか?」


「社長さんなら心配無用だよ。」