「心に中に雨が降ってるみたいだ」




違う?と首を傾げて微笑むアダム。

穏やかな微笑みが私を包んで。

真っ暗な海に光が差し込む。


その笑みに見惚れながらも、彼のその言葉がすっと心の中に収まった。




(雨…か)




その通りなのかもしれない。

打ち付ける雨に海にはいくつも波紋が広がり、一つの波紋は更に大きな波紋を呼ぶ。

そんな海では呼吸することすら難しい。


心の中で降り続く雨は止むことを知らなくて。


初めはその雨を避けるために差していたはずの傘も、いつの間にか雨足の強さに負けて壊れてしまった。

代わりの傘はこの手にはない。


響く雨音は全てを遮る。

そしていつしか忘れた穏やかな波の音。


だけど




「…そんな、綺麗なものじゃないよ」