ベンチに座って星空を見上げていると、中庭を囲む硝子戸の1つが開く音がし、その方に向くと浴衣姿のヤスさんがいた。

「お嬢、ここにいらっしゃったんすね。」

ニコニコと微笑んでいるヤスさんは、喋りながらこちらに来た。


「…それは、若に…?」

ヤスさんは驚いた顔で、私の手を指さして言う。

何のことだ?
と思い、両手を広げて見てみると、いつの間にか左手の薬指にダイヤが光っていた。


月光に輝くそれは、いつかのシンデレラの様で…
シンデレラをバカにした、私の様で…


「あぁ…」

素っ気ない返事しかできなかった。