「かっ…霞澄!」

夕食を食べ終え、部屋に戻る前に中庭に行こうと思い、廊下を歩いていると維十が速足で近づいて来た。

顔はほんのりと赤みを帯びていて、表情もなんだか切羽詰まっている様だった。

緊急事態かと思い、少し身構えると、維十は無言で私の腕を掴んで自分の部屋に連れていった。

維十の部屋は相変わらず綺麗に整頓されていて、開けられている窓から白い満月が輝いていた。


私は維十の手によってベッドに座らされて、維十は私の前の床に座った。


維十が私を見ると、顔を覗き込む様になり、私は少し緊張した。

「霞澄…今更なんだが…」
「?」

「これ…」


維十の大きな手の中には、箱が1つ。


受け取って、蓋に手を添えると、今までに無いほど心臓が速く動いているのに気づいた。

「開けてみろ。」

微かに震える維十の声は、頭の中を響いて渡った。


ゆっくりと開く箱の蓋

きっと見る前にはすでにわかっていた。
中に何が入っているのか。


顔を覗かせた小さなダイヤは、私には眩しすぎた。

目がやられて、涙が滲んだ。