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陰陽寮は、騒がしい。
「符じゃ、符を用意せい!」
「懐剣の準備はできたか」
「ぬしらは陽明門の方に行けっ」
「祈祷の準備を・・・」
はてはて、なぜこんなにも騒がしいか。
符を取りに行ったり届けたり、加持祈祷に必要な懐剣やら榊を手に走り回っている清明に、
それを考える余裕は無い。
天冥の一件について、まだ懲りずに勧誘の文を出し続けていた陰陽頭だったが、その彼もそれどころではなかった。
陰陽寮全体が、忙しい。
あちこちでどたばたと走り回る音がし、加持祈祷のために何人かが集まって真言を唱えている。
実はつい昨日、もっと言えば清明が遠子に呼ばれたその日、都のあちらこちらで、死んだはずの人間が姿を現したのだ。
死んだはずの妻が戻ってきた、だとか。
数十年も前に死んだとされる祖父が居間にいた、だとか。
とっくに失脚して命を落としたであろう政敵が蘇って来た、だとか。
ありとあらゆる死人が、この世に蘇って来たのだという。
家族の帰還、いや蘇生に喜ぶ者たちもいたが、その裏腹、怨霊の再来だと恐れおののくものもいる。
今もまだ、さまざまなところで死人が次々と蘇ってきたとのことで、専門分野である陰陽寮は馬の如く働かねばならない。
「晴明殿を呼べ」
「今はどこに・・・蔵人所か」
「土御門邸におられます」
手に負えぬとばかりに、廻りのものは晴明に頼る傾向をみせた。