気が付いた時には、辺りは黄色い夕暮れに包まれていた。

少し身体が冷えていて、長いことここに座っていたんだってことがわかった。


恐る恐る横を見ると彼女はまだそこにいて、真っ直ぐに誰もいないグラウンドを見つめていた。


顔をあげた僕に気付き、こちらを向いた。


それから少し目を細めて、また優しく微笑む。今度は少し困ったように。


「あなたのことを考えてなかったわけではないんです。…でも私、無神経でしたね。あなたは私が思ってる以上に…」


そう言うと彼女は一瞬だけ俯いて、それから立ち上がってスカートについた芝をぱたぱたと払った。


「…ごめんなさい。」



一度だけまたグラウンドを見つめ、唇をきゅっと締めた。


そして僕を見ないまま、校舎の方へ駆けて行った。


あの夏が、蘇る。