観客の大きな声が響いた。

僕の目には彼のミットに入ったボール。
次の瞬間、彼はマスクを外した後頭部から壁に激突した。
倒れこんだ後もボールはこぼれ落ちなかった。


誰もが息を飲んだ。


あんなにうるさかった甲子園が静まり返った。

蝉の声と太陽の照り付ける音だけが聞こえている。


頭に一気に血がのぼって、息苦しくなった。


立ちくらみが起きそうになった時、甲子園に嵐のような歓声があがった。


彼が立ち上がったのだ。


審判に肩を支えられながらも観客に笑顔で手を振り、彼はベンチに戻った。



彼は助かり、僕たちの夏は終わった。