池田屋事件、そしてその後起こった禁門の変の働きにより、新撰組の名声は一気に高まった。朝廷、幕府、会津藩からは感状と200両
あまりの恩賞が与えられた。
歴史の表舞台へ一気に駆け上がった新選組は様々な仕事も増え始め、てんやわんやしている、九月も半ば、そんな折――。
「――これ以上アイツに好き放題されたらたまらない。脱退も覚悟の上だ」
「脱退って…。熱くなりすぎてねえか?」
「そんぐらい考えてなきゃ嘆願なんて出せねえ」
ああ、どうしてこんな厄介なタイミングに永倉さんの部屋を訪ねてしまったのか。
永倉さんの部屋の近くまで来たとこに聞こえてきた会話。近藤さんと土方さんが今出かけているからといっても、無用心すぎやしな
いだろうか。
しかも、
「…誰だ?」
当然、私が部屋の前にいることはバレている。
知らないふりして引き返そうとも思ったが、ここは素直に出たほうが楽だ。
「深山です」
「…入れ」
少しした沈黙のあと入室許可が下りた。できれば入りたくはなかったが、襖を開け、中へ入る。
「…!」