「リボルバー…英国からの密輸入か?尊攘派か英国につながりでもあったのか?」
「何とも言えませんけど…。それで、迂闊に手が出せなくて」
「確かに飛び道具出されたら手も足も出せない」
「それに自殺されても厄介ですし」
きっと上は彼女を生きたまま、無事に帰ってくることを望んでいる。うかつにこちらが手を出して、彼女を死なせてしまえば、近藤さんや土方さんをはじめとした新撰組の人たちの積み上げてきたものが一気に瓦解してしまう。
「…幕府から与えられた地位に、そんなに意味なんてあるもんかね」
「…聞かなかったことにしておいてあげます」
「そりゃどうも」
それだけ言うと原田さんは桶を抱えて、引き止める暇もなく部屋を出て行った。
「…」
一瞬見えた横顔には、彼らしくも無い、一切の表情が抜け落ちたようだった。
気にはかかったが、問い詰める気も起きない。ピリピリとした雰囲気をまとった彼を、見送ることしかできなかった。
それが、あとで、どれだけ後悔することとなるか、今はまだその予兆すら感じていなかった。