「もう、大丈夫です」
「無理するなよ?」
結局、心配そうに顔を覗き込んでくる原田さんに、私は曖昧に笑って返すしか出来なかった。
「それと副長がお前を呼んでる。目が覚め次第すぐに、てな」
「分かりました」
「ま、別にすぐに行かなくてもいいさ」
原田さんは、いっそ呆れ返ったような口ぶりで言う。けれどすぐ、私の視線に気づいたようで、罰の悪そうに目を逸らし、話題を挿げ替える。
「…三鷹葵についてだ。池田屋で見たんだってな?」
「はい。本当にそっくりで驚きました」
「俺たちは人相書きしか知らねえからな。そりゃますます見てみたくなったな」
「沖田さんが報告なさったんですか?」
「昨日の内にな。ついでに何で捕まえなかったんだって言われてたぜ?それは俺も聞きたかったことなんだけどな。お前と沖田がいれば女一人くらい、捕まえられただろ?」
「…、リボルバーを持ってたんです」
原田さんの疑問も最もだ。一、二の剣術の腕を持つ沖田さんだ。相手が女、たとえ武器を持っていたとしても、関係ないだろう。彼の体調が万全だったのなら。
結核は伝染る病。まさか沖田さんが発作を起こしていました、なんて言えない。沖田さんのためにも、何より混乱を起こさないためにも、この場は体のいい言い訳でごまかすしかない。