目を覚ましてまず目に入ったのは、ここ半年ですっかり見慣れた部屋の天井。
そのまま、暫くぼぅっとしていたら、部屋に見舞いにきてくれたらしい原田さんが来た。
「気分はどうだ」
「寝すぎで少し頭が働きませんけど。…私、倒れたんですね」
「池田屋から帰るときな。永倉が強く叩きすぎたって慌ててたから、あとで何か言っといてやってくれないか?」
あいつも馬鹿だよなあ、と原田さんは言うけれど、確かに目の前で突然倒れられたら慌てるだろう。右往左往として慌てる永倉さんの姿が簡単に思い浮かぶ。
永倉さんには申し訳ないから、あとでお団子でも差し入れしよう。
顔でも洗え、と差し出された桶と手ぬぐいを有難く借りて、顔を洗えば、少しは頭が働き始めた。
「…女性の洗顔を見るとは関心しませんね」
「ん、ああ、悪い悪い」
「冗談です。とりあえず、色々ご迷惑おかけして、すみませんでした」
桶をよけて、頭を下げれば、そのまま頭をわしわしと撫でられた。ここの、新撰組の人たちはやたらと人の頭を撫でるのが好きらしい。
「気にするな。俺らも慣れたといっても、死体を見るのは出来れば遠慮したいからな。むしろ全部片付くまで気張ってた深山は偉いよ」
「それは…」
全くの見当違いの話だ。
一般的に見れば、きっと原田さんのその見解が正しいのだろうけど、この半年間の幸せな気持ち悪さが祟って倒れました、なんて誰が言えようか。