人はいずれ死んでいく。必ず死が訪れる。ただ、その死期がくるのが、早いか遅いか、ただそれだけ。

「深山、行くぞ!」
「はい」

 私が今新撰組にいるのは、この時代で生きる術を持たないから。新撰組が私を置いてくれるのは三鷹葵の手がかりを掴むため。
 だからお互いに感情移入する必要もなければ、望む以上のことを求めることもない。そう思ってた。

「あーあ…」

 池田屋を囲む乱闘騒ぎを聞きつけた野次馬たちを押し退けるように、屯所への帰路を辿る。
 空を仰げば、街頭一つない空に浮かぶ満天の星。月並みな感想だけど、ああきれいだな、と思う。

 半年前の私は、大きく広がる空を見て、なんと言ったか。

「半年は大きいですね」
「ん?…ああ、深山が来てもう半年か。早ぇもんだな」

 一歩前を歩く永倉さんが振り返り、笑いながら肩を叩いてくる。

「本当に、早くて、重くて」

 関わりたい、と思わなければ、きっとこれから起きることに一喜一憂せずに済んだ筈。
 新撰組のこれからの行く末は知らない。ただ、学んだ日本史を思い出せば、どう考えても新撰組という組織は解体の道しかない。その予兆として、思い知った沖田さんの病。

「信じられないくらい」

 そんなことに痛む心なんて、今まで持ち合わせてなかった。
 思い返せばいつだって、誰かを恨むばかりで、本当に自分の心が傷付いたことは一度だって無かった。
 飛び降りたことも、ただ、見返したかっただけかもしれない。

「吐き気がする日々でした」

 もうずっと微温湯にさらされ続けた心はふやけてる。

 そしてまた、視界の黒く暗転し、最後に、はちみつ色がちらついた。