結論から言うと、やはり池田屋が当たりだった。戸惑う池田屋の店主を押し切り、一階と二階へ近藤さんたちが踏み込んでいく。すぐに一階を張っていた藤堂さんが顔を出し、土方さんへの伝令を他の隊士に言付ける。二階から階段を転げるように、沖田さんが取り逃したであろう浪士の人が刀を片手に一目散で玄関へ向かい走ってくる。正面玄関を張っているのは私だ。そう簡単に抜かれても困る。
「っどけ!小僧!」
無駄口を叩く暇があるなら、もっと逃げる算段を立てろ。
振り下ろしてくる刀を往なして、足払いをかけ、男の体制を崩し、首の裏に手刀を叩き込めば、呆気なく男は気を失い、その場に倒れる。
「お見事」
「武田さん」
店の奥から、叫び声だとかうめき声だとか、何か激しく壊れる音が響く。先ほどから窓や裏口から逃げ出す浪士を捕えながら、店内の様子を伺う限り、――分が悪い。
恐らく相手は20近くはいるかもしれない。
「…武田さん。ここ、お任せします」
「行くなら二階だ。一階に大した奴らはいない」
「分かってます」
血で滑りやすくなっている階段を駆け上がれば、すぐ沖田さんの姿があった。浪士のほとんどが既に地に伏して事切れてるようだったけど、まだ広間の奥に誰か居る。
「みや、ま」
「沖田さん…?ちょっと大丈夫ですか?!」
ふらり、と今にも倒れそうな沖田さんを支えながら、傷の検分をするが、大した傷はない。けれど、沖田さんの顔は真っ青で、足も震えている。目の焦点も合っていないのかもしれない。