夢の中で、たすけて、と叫ぶと同時に、目の前に木目の天井が広がった。けれど、それ以上に気分は最悪だった。

 荒い呼吸に、鼓動が信じられないくらい速い。
 呼吸の仕方が分からなくなる。
 喉の奥から吐き気がこみ上げる。
 目の奥がつん、として、枯れたと思った涙が再び視界を覆った。

「う、あ…ぁ」

(さいあく、だ)

 ばん、と大仰な音を立てて、真横の戸が開いた。
 誰が来たのか、そもそもここは何処なのか。頭はさっぱり回らない。

 知らない誰かは、隣に座るような気配がした。
 私の背中を一定のリズムで叩きながら、空いてる手で横に置かれた手桶を引く。

「…落ち着いて、ゆっくり息をはいて」
「は、…はぁ…」
「気持ち悪い?吐いても大丈夫だから」
「う、あぁ…っ」

 口の中に胃液の酸味が広がる。再び気持ちがわるい、と告げれば、口をゆすいで、と水の入った湯のみが手渡された。

 震える手で受け取って、口をゆすげば、気持ち悪さも幾分和らいだ。

 呼吸の仕方も、思い出した。