元治元年、1864年。
 新撰組はただの侍の集団、のようなものだと思っていたが、意外と政治的なことも考えている集団だったらしい。特に意外だったのが、永倉さんだ。中々広い情報網と深い政治的見解を持っていて、時折土方さんや近藤さんに対して教える側にたっているところも見かける。だから、ついでというか、私の耳にも今の日本の情勢が入ってくる。
 年の始めは徳川家茂の上洛により、京中がかすかに慌しい動きを見せていた。二月には年号を元治に改元。三月には参与会議解散。そして、攘夷運動の重要な一角を担った、あの西郷隆盛が薩摩藩の軍賦役(軍司令官)に任命された。
 私の記憶が正しければ、この年の7月、禁門の変が起こり長州藩が朝敵とされ、長州征伐が行われる。そして翌々年。薩長同盟成立。その裏で、現代では幾度もドラマ化もされたかの傑物、坂本龍馬も水面下で動いているのだろう。

 江戸、京、長州、薩摩、土佐。各地でじわりじわりと時代は動いている。保守か革新か。

 そして、5月も終わり。新撰組も、大きな転機を迎える事件を目前としていた。