それは間違いなく悪夢だった。

 兄が大好きだった。
 バスケが得意で、頭も良くて、かっこいい自慢の兄だった。
 兄の妹であることが、何よりも嬉しかった。


 なのに。


 最後に見た兄の顔は、とても怖かった。切羽詰まったような、そして何か私に向かって懇願する。

 ごめん、と言っているようにも聞こえた。すきだ、とも。

 そして、おれをゆるしてくれ、と。

 どうしたの、と兄に掛けた声は震えていた気がした。


 そうして、


 お兄ちゃんは。